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教員研修

2022年7月20日(水)20:00-22:00 場所 Zoom

教員研修

半期の授業設計ワークショップ

教員研修テーマ

教員の実践力向上のための理論的な裏付けと具体的対応について全国で活躍するファカルティ・ディベロッパー(FDer)から学ぶ。

本日の内容

1. 背景
2. 到達目標
– 到達目標の確認
3. 到達目標と評価方法
– 到達目標をどのように評価・確認するのか!?
4. 評価方法と授業外学修課題
– 評価方法で測る能力を、どのような授業外学修課題で育成するのか!?

ナビゲーター

髙橋 光輝教授 高等教育研究開発センター長 デジタルハリウッド大学デジタルコミュニケーション学部長

本日の進行

1. 講師紹介
2. ゲスト講演
3. 質疑応答

※個人ワークやブレイクアウトセッションを交えながら実施

教員研修の目的

教員が相互に各自の指導方法を共有し、そこから得た情報を指導力向上の一助とし、デジタルハリウッド大学・大学院全体の教育効果を高める。

※FDとは?
 ■Faculty Development
  Faculty = 教える立場にある人 教員、教職・員
  Development = 成長、発展

ゲスト講演

『半期の授業設計ワークショップ』
【講師】芝浦工業大学教育イノベーション推進センター 榊原暢久氏(ファカルティ・ディベロッパー、SDコーディネーター)

[本WSの到達目標]
1. 基礎的な授業デザイン方法を修得することができる。
2. 自身の授業をふり返り、成果や課題、改善点を明らかにすることができる。
3. 自身の授業における授業デザインに関する課題解決のヒントを得ることができる。


1. 背景

2008年の中央教育審議会にて「何を教えたか」から「何を学んだか」へと高等教育のパラダイム転換が謳われ、明確かつ公平な評価基準の必要性が提起された。

2012年の中央教育審議会では、能動的な授業を中心とした教育の質保証や、従来の知識偏重だけではなく汎用的能力育成も重視するような高等教育の質的転換が謳われ、テストだけではない評価方法の必要性が提起された。

その動きに伴い、2014~2019年度の「大学教育再生加速プログラム」では、アクティブ・ラーニングの拡充や学修成果の可視化が重視され、2020年の中教審大学分科会では「教学マネジメント指針」が作成されるに至った。機関別認証評価の次の第4サイクルでは、学修成果の可視化がより重視される方向である。


2. 到達目標と授業設計

各シラバスの到達目標は、単体で存在するのではなく、大学全体または学部や学科のディプロマ・ポリシー(以下DP)に紐づいているため、設定の際は関連を意識する。

高次の学習目標を設定し、なおかつアクティブラーニングを取り入れると、相応の時間を要することになる。限られた中でより高次な目標を達成するためには、周到な授業設計が不可欠であり、基礎的な授業設計能力はとても必要な力となる。

3. 到達目標と評価方法

[授業設計]
授業設計において、基盤となる学問分野は、Instructional Design(以下ID)である。IDの目的は、①教育効果を高める、②教育効率も高める、③魅力を高めるの3点。IDの第一段階として、まず出口(授業の目的、到達目標)と入口(前提条件)をはっきりさせることが重要である。

[評価の目的]
学生は、学期途中に評価の機会があることで、そのために勉強するし、その結果を受けて復習や整理をする。また、学習途中に理解度を把握することで、足りないと思うところがあれば、学ぶ機会を獲得することになる。評価とは、単に成績をつけるのではなく、学習を促進するために行うものである。

その意味で、従来の成績をつけるための学期末の評価である「総括的評価」から、学期途中にどの程度理解したかを測る「形成的評価」が重要視される方向に時代は流れてきている。

[評価方法]
「知識・理解」、「思考・判断」は、テストやレポートで測り易い。
「技能」面は、体を動かしてできる目標とし(例えば、実験の操作がうまくできる等)、観察や実演にすると、能力を測りやすい。
「関心・意欲」や「態度」については、測りづらいが、レポートと実演や、レポートとポートフォリオ、学生同士のピア評価などを組み合わせて評価すると良い。

[チェックリストの例]
教員が学生のレポートを採点する際に、本来論述すべき内容を評価する以前に、日本語の書き方やレポートのお作法等で、ストレスを感じることがある。
対応策としては、例えば学生にチェックリストを渡し、きちっと守られているかをチェックしてから提出させたり、提出前に学生同士でチェックさせるだけでも、教員側のストレスを減らすことができる。

[ルーブリックの例]
レポートの評価の際、観点がいくつかあって、観点ごとにレベルが何段階かある場合、ルーブリックを活用すると、一人の学生に対して複数の観点を同時進行でブレずに採点することできて良い。
また、学生に事前にルーブリックを渡し、自己評価をさせてから課題を提出させると、学生もどういう観点やレベルで評価されるか認識できるため、良い教育効果を生む。

[ミニッツペーパー評価の例]
数分で記入できるペーパーに、不明点や、要点、質問などを書かせる方法もある。レポートを書かせる前段階の指導も兼ねると捉え、良くないところを簡単にフィードバックしておくと、その後のレポートの質も向上する。

4. 評価方法と授業外学修課題

[授業外学修課題の具体例]
授業外課題の具体例は、知識注入や予習・復習に関わるものでは、演習問題、WEB課題、事前のビデオ視聴などがある。
知識面でも、発展的なものだと、何か特別な課題レポートや、問題作成レポート、コンセプトマップの作成、学んだ知識を元にしたプログラム作成、グループでのポスター作成などがある。

また、学習記録や振り返りも、授業外課題としては有効である。これは、知識を定着させること以外に学生を学習者として成長させることができる。例としては、ラーニングポートフォリオや振り返りシートなどが挙げられる。

[授業外学習課題の性格]
予習、復習を目的とする課題は、学生が学習者として成熟していない段階では、実行を担保する仕掛けが必要である。
課題自体に取り組む・取り組まない、もしくは課題の内容について、学生に選択肢があると良い。学生の意欲向上には良いが、教員が学生にフィードバックをするのに時間を要する。
また、授業外学習課題を課す対象学生を選定する方法(例:中間テストで一定点数以下だった学生)や、目的によって個別学習か共同学習を選択するのも良い。

[90 / 20 / 8 の法則]
人間の脳が集中をキープできるのは90分までであるため、1コマをどう設計するかが鍵となる。
また、記憶を保持しながら聞くことができるのは20分までであることから、90分の授業の場合、少なくとも5ブロックに分けて設定する必要がある。20分ごとに内容や形式を変えると有効である。
そのほか、人間の脳は、受け身な状態が10分以上続くと興味を失い始めることから、8分ごとに学生に参画させると良い。参画方法は、その場で考えさせたり反応させるなど、小さなことで良い。

使いやすい協働学習の手法としては、個人で考えた後にペアで話す時間を設け、全体で共有する「Think-pair-share」、選択問題をクイズ形式で、その正解具合でその後の授業内容の詳しさを調節する「peer instruction」、その授業のコアとなる題材に関して学生同士が行う「教え合い」などがある。


以上

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